高齢者は体内の水分が不足しがちで、暑さに対する感覚機能や体の調節機能が低下しており、特に熱中症へのリスクが高くなっています。この記事では介護の現場において利用者の熱中症を防ぐための注意点を紹介します。

1. 観察ポイント:見逃さない早期サイン

高齢者は、①のどの渇きを感じにくく・②体温調節機能が低下しやすいため、早期発見が困難です。以下の兆候を日々のケアで注意深く観察しましょう

  • 皮膚の乾燥・つやの喪失:乾燥やハリのなさは脱水のサイン

  • 口腔内の乾きや粘つき:口腔チェックを忘れずに

  • 体温・発汗の状態:体温上昇や発汗減少に注意

  • 脈拍や立ちくらみの有無:立位脈拍増加は脱水リスクあり

  • 排尿回数・尿量の減少:脱水が進むと尿も減少

  • 意識や表情の変化:ぼんやり、ぼーっとするなど小さな変化も大切

2.水分摂取の工夫:こまめに・楽しく・続ける

▪︎ 「1日1.2 L」を目安にコップ1杯ずつ

環境省推奨では、高齢者の水分摂取目安は1日1.2 L(約6杯)
コップ1杯ずつ1時間ごとに飲む習慣が推奨されています 。環境省 熱中症環境保健マニュアル2022

▪︎ のどが渇く前に促す工夫

  • タイミングを定める(起床後・食後・入浴前後など)

  • 職員が声かけを習慣化(「水分摂りましょう」など)

▪︎ 飲みやすさを工夫する

  • 常温麦茶や経口補水液の活用

  • ゼリー、味噌汁、果物も水分源として有効

  • 塩分・ミネラル補給もセットで摂取が望ましい

▪︎ 室温管理と環境整備

  • 室温は28℃台を目安に調整し、エアコンと扇風機を併用

3.記録のコツ:見える化で継続的な見守りを

✓ 書くべき項目

  • 水分摂取量・種類・時間

  • 体温・脈拍などのバイタルサイン

  • 排尿回数・色・量

  • 皮膚・口腔の観察結果

  • 室温・湿度など環境情報

✓ 記録フォーマットの例

時刻

飲水量(計1.2L目安)

種類

体温

観察メモ

8:00

200 ml

麦茶

36.5℃

口が湿っていて乾燥なし

10:00

150 ml

経口補水液

36.7℃

わずかに汗かく

12:00

200 ml

冷やし味噌汁

36.8℃

室温28℃、涼しく感じる

14:00

150 ml

ゼリー

36.7℃

休憩中に水分補給の声かけ実施

✓ チェックと共有

  • 水分総量(例:朝・夕)を確認

  • 異常時には看護師・医師へ報告・連携

  • 記録を毎日共有・保存し、状況変化を追跡

4.まとめ:習慣化が最強の予防策

脱水・熱中症予防において重要なのは、初期兆候の察知・習慣化された水分補給・可視化された記録の三点です。
高齢者は“自分で気づきにくい”ため、職員による観察+声かけ+記録が命を守るケアにつながります。相談・連携を含めてチームで取り組むことで、安心・安全な夏を支える体制が整います。

(参考:環境省・厚労省・経産省 『高齢者のための熱中症対策』(PDF)、環境省『熱中症環境保健マニュアル2022』

監修: 山口開渡 先生
<プロフィール>
登録理学療法士、両立支援コーディネーター、リスクマネジャーを保有。
大学卒業後、リハビリテーション特化型の通所介護事業所に入社。
その後、ケアミックス病院に転職、介護老人保健施設にて通所リハや訪問リハに従事。急性期~緩和・在宅期と全ての病期を経験。