連載スタートにあたってEEFUL DBでは本日から、介護現場で働くすべての方に向けた新連載「介護現場のAI仕事術」をスタートします。 「AIが便利らしいとは聞いている。でも、何から始めればいいかわからない」「ニュースは見るけど、自分の仕事にどう使うか全然イメージできない」など、現場の方からはそんな声をよく耳にします。 この連載は「AI情報の紹介」ではなく、「現場での実装」にこだわります。 ChatGPTからスタートして、少しずつ難易度を上げながら、最終的にはAIエージェントを使いこなせるレベルまで、週3本のペースで更新していきます。 難しく考えなくて大丈夫です。まず一緒に、今日の10分間をAIに使ってみましょう。 |
介護現場のAI仕事術
#01 長い文書をChatGPTで要約しよう
・難易度 ★(入門)
・所要時間 約10分
・使うツール ChatGPT(無料版でOK)
読まなきゃいけない書類が、また増えている
情報が増えている。でも、それを読む時間は増えていない。
介護の現場で働いていると、定期的にそのことを実感する瞬間があります。あの、少し気が重くなる感覚です。
「読まなければ」とわかっている。でも現場は動いている。そうこうしているうちに、次が届く。
これは怠慢ではありません。介護職に求められる情報量が増え続けているのに、それを処理する時間は増えていない。構造的な問題です。
今日覚えるのは、この問題をまるごと引き受けてくれる技術です。長い文書を、AIに要約させてみましょう。
ChatGPTを開いてみよう
まずはツールの準備から。
ブラウザ(ChromeやSafariなど)で「chatgpt.com」にアクセスしてください。Googleアカウントがあれば、そのままログインできます。無料で使えます。
ログインすると、画面下部に入力欄が表示されます。ここに「話しかける」のが基本の操作です。

実際の手順:文書を貼り付けて、要約させる
ステップ1|要約したい文書のテキストをコピーする
PDFを開いて [Ctrl]+[A](Macの場合は [Command]+[A])で全文選択 → [Ctrl]+[C] でコピー。Word文書も同じ操作です。
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ステップ2|ChatGPTの入力欄に、指示と一緒に貼り付ける
コピーしたテキストを入力欄に貼り付け、文書の前か後ろに一言添えます。この「一言」がプロンプトと呼ばれるAIへの指示文です。
ステップ3|送信する
入力欄の右端にある送信ボタン(矢印のアイコン)を押すと、数秒で要約が返ってきます。

プロンプトは「育てる」もの。3段階で試してみよう
ここが今日の一番のポイントです。
ChatGPTに何かを頼むとき、指示の書き方によって返ってくる結果がまったく変わります。最初から完璧な指示を書く必要はありません。短く始めて、少しずつ付け足していく。それがコツです。
Lv.1|まずは一言で投げてみる
【指示文(プロンプト)】
「1分で読めるように要約して」
ChatGPTの返答例:
本通知は、介護サービス事業所・施設等における職員のテレワーク(遠隔勤務)の取り扱いについて、考え方と留意事項を示したものです。管理者・各職種ともに、個人情報の適切な管理と利用者の処遇への支障がないことを前提に、一定の条件のもとでテレワークが認められます。 |
Lv.2|「誰の立場で読むか」を加える
【指示文(プロンプト)】
「介護施設の施設長の立場で、1分で読めるように要約して」
ChatGPTの返答例:
【施設長として押さえるべき点】 ・管理者は、管理上支障がない範囲でテレワーク可能。緊急時に速やかに出勤できる体制の確保が必要 ・介護職員・看護職員の直接処遇業務はテレワーク不可。書類作成等の事務作業のみ可 ・ケアマネジャーは書類作成・計画作成はテレワーク可。モニタリングはオンライン実施に利用者の同意が必要 ・個人情報の管理徹底が大前提。画面の覗き見・会話の漏洩防止を環境として整えること |
Lv.3|「何を知りたいか」をさらに具体的に伝える
【指示文(プロンプト)】
「介護施設の施設長の立場で要約して。 特に以下の点を箇条書きで整理して」
・施設が対応すべきこと
・変更点
・期限
ChatGPTの返答例:
【施設が対応すべきこと】 ・テレワーク実施にあたり、緊急時対応フローを事前に整備する ・勤務時間中に現場とテレワーク実施者が適切に連絡できる体制を確保する ・個人情報保護のため、テレワーク環境(画面・音声の漏洩防止)を整える 【主な変更点】 ・管理者以外の各職種についても、業務の種類に応じてテレワークが認められることが明確化された ・職種ごとの具体的な考え方(医師・薬剤師・介護職員・ケアマネ等)が示された 【期限・出典】 ・令和6年X月XX日付通知 ・施行:通知発出をもって適用 |
同じ文書に同じChatGPTを使っているのに、指示の精度によってここまで結果が変わります。
まずLv.1で投げてみて、物足りなければ情報を足していく。その感覚を覚えておいてください。
個人情報の取り扱いに注意
【必ず守ってほしいルール】
利用者の氏名・生年月日・住所など、個人を特定できる情報をChatGPTに入力しないこと。
無料版のChatGPTでは、入力した内容がサービス改善に使われる場合があります。行政文書や社内資料を扱うときも、固有名詞・住所・利用者番号などは削除またはイニシャルに置き換えてから貼り付けましょう。
この技術、こんな場面で使えます
手順を覚えたら、あとは「どこで使うか」です。
1. 介護報酬改定の通知を読むとき
毎回届く厚労省の通知は文量が多く、どこが自施設に関係するか見極めにくい。「施設長の立場で、対応が必要な変更点と期限を箇条書きで」と指示するだけで、読むべき情報が絞られます。
2. 感染症・災害対応マニュアルの確認
自治体から送られてくる感染症対応の手引きは、緊急時に読む余裕がありません。平時にAIで要点を抽出・保存しておくだけで、いざというときの初動が変わります。
3. 外部研修テキストの事前予習
研修当日に初めてテキストを開いて慌てた経験はありませんか。前日にChatGPTで要約しておくと、当日の理解度と質問の質が上がります。
4. ケアマネ向け:支援経過記録の整理
【注意】 このシーンでは個人情報の取り扱いに特に注意。氏名・住所・生年月日は必ず削除してから使用してください。
複数回分の記録を貼り付けて「この記録から読み取れる生活課題と、次のプランに向けた論点を整理して」と指示すると、プラン作成の下書きとして活用できます。
5. ご家族への説明準備
医師からの診断書や検査結果の専門用語を、ご家族にわかりやすく伝えるための言い換えにも使えます。「医療知識のないご家族にも伝わる言葉で、説明文を作って」と指示するだけです。
【きょうの10分】
手元にある行政文書や通知を一つ選んで、まず「1分で読めるように要約して」とだけ送ってみてください。結果を見てから、「施設長の立場で」「期限も教えて」と付け足していく。それだけで、今日学んだことはすべて体験できます。
