#19 AI隊長になる——チームへのAIの広め方 | 介護現場のAI仕事術

・難易度:★★★
・所要時間:約15分
・使うツール:ChatGPT


この連載を第1回から読んできた方は、もうかなりのことができるようになっています。

文章を整える、要約する、議事録を作る、壁打ちに使う。気づけば、AIが業務の一部になってきたはずです。

次のステップは「自分だけ使える」から「チームで使える」への移行です。

でも、ここで多くの人が壁にぶつかります。「便利だよ」と言っても伝わらない。「やってみて」と言っても動いてくれない。

この回では、チームにAIを広めるときの現実的なアプローチを整理します。


なぜ「便利だよ」だけでは広まらないのか

新しいツールが職場に定着しない理由は、大抵同じです。

「覚えることが増える」「失敗したらどうする」「今のやり方で十分」。

AIに対してはさらに「個人情報が心配」「間違ったことを言いそう」という不安も加わります。

これらは怠慢ではなく、真っ当な懸念です。「便利だから使って」という言い方では、この懸念に何も答えていません。


この回でやること

  1. ・広める前に「使える場面」を一つ絞る
    ・「これを貼れば使える」形にして渡す
    ・失敗しても大丈夫な使い方から始めてもらう
    ・小さな成功体験を作る


※返答例はイメージです。実際の出力は毎回異なります。

Lv.1 広める前に「使える場面」を一つ絞る

「AIって色々できるんだよ」という説明は、逆効果になることがあります。選択肢が多いほど、人は動かなくなります。
最初に広めるときは一つの場面だけに絞ります。

介護現場で最初の一歩として向いている場面:

  • ・申し送りの下書きを整える
    ・ヒヤリハット報告書の文章を直す
    ・家族への連絡文の下書きを作る

この中から、自分の職場で「これが一番困っている」「これが一番時間がかかっている」場面を一つ選びます。

【ヒント】「全員が毎日やっている作業」を選ぶのがポイントです。週1回しかやらない作業より、毎日の申し送りの方が効果を感じやすく、習慣になりやすいです。


Lv.2 「貼るだけ」で動けるプロンプトをLINEで送る

「ChatGPTを開いて、こんな感じで入力してみて」という説明では、多くの人は動きません。

渡し方を変えます。コピーして貼るだけで動くプロンプトを用意して、グループLINEに送るのです。

たとえば申し送りの整形なら、こんな文章をLINEで送ります:

【申し送り整形プロンプト】使ってみてください

ChatGPT(https://chatgpt.com)を開いて、下の文章をコピーして貼り付けてください。

「(ここに申し送り内容を貼り付ける)」の部分に申し送り内容を追加して送信するだけです。

---

以下の申し送り内容を、箇条書きで整理してください。

介護記録として使いやすい形にしてください。

(ここに申し送り内容を貼り付ける)

LINEからそのままコピーできるので、「ChatGPTって何?」という人でもすぐ動けます。


Lv.3 失敗しても大丈夫な使い方から始めてもらう

最初に「これでケアプランを作ろう」という高いハードルを設定すると、失敗したときのダメージが大きく、二度と使ってもらえなくなります。

最初は出力が間違っていても困らない用途から始めてもらいます。

<向いている用途>

  • ・文章の下書き(最終的に人が確認・修正する)
    ・アイデア出し(採用するかどうかは自分が判断する)
    ・言い回しの参考(そのまま使わず参考にする)

  • <向いていない最初の用途>

  • ・服薬情報や医療的判断が必要な場面
    ・利用者の個人情報を含む記録の自動生成
    ・「AIが言ったから」と責任が曖昧になる判断

「AIの出力はあくまで下書き。最終確認は必ず人がする」というルールを最初に伝えておくと、不安が和らぎます。

【ヒント】「AIは間違えることもある」と最初に伝えておく方が、後から信頼を失うよりずっといいです。弱点を先に開示することで、かえって安心して使ってもらえます。


Lv.4 小さな成功体験を作る

一人でも「使えた」という体験をした人が出たら、その話を共有する場を作ります。

朝礼で30秒でも「昨日これを使ったら申し送りが5分短くなった」という話が出るだけで、周りの関心が変わります。

また、最初の成功体験として、「介護あるある4コマ漫画」もおすすめです。
第11回で紹介した「介護あるあるを4コマ漫画にする」は、実は入り口として最高です。
「レクで負けてあげようとしたら、本気で勝ちにくる利用者さん」
「新人スタッフより利用者さんのほうが施設のことを詳しく知っている」

——こういうネタをその場でChatGPTに入れると、その場で笑える4コマが出てきます。

業務の効率化より先に「楽しかった」体験を作る。それがチームへの広め方として一番自然なスモールステップかもしれません。
みんなで「あるある!」と笑いながら試した経験が、「じゃあ次は申し送りでやってみようか」という会話につながっていきます。

AI隊長の仕事は、AIを教えることではありません。一緒に試してみたいと思ってもらえる場を作ることです。


まとめ

  • ・広める場面は一つに絞る
    ・「貼るだけ」で動けるプロンプトをLINEで送る
    ・失敗しても困らない用途から始めてもらう
    ・最初の成功体験は「楽しい」から入るのもOK

チームへの普及は、技術の問題より人間関係と信頼の問題です。押しつけず、焦らず、一人ずつ。
それがAI隊長の仕事です。


【きょうの15分】

職場で「これが毎日の手間だよね」と感じている作業を一つ思い浮かべてください。
その作業に使えるプロンプトを一つ作って、渡す相手を一人イメージしながらLINEに貼れる形にまとめてみましょう。
あるいは、今日の休憩中に同僚と一緒に介護あるある4コマを作ってみるのも最初の一歩です。


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