介護現場のAI仕事術
#05 文章のトーンと読者を指定する | 介護現場のAI仕事術
・難易度:★
・所要時間:約10分
・使うツール:ChatGPT(無料版でOK)
同じ内容なのに、相手によって言葉が変わる
介護の仕事をしていると、同じ情報を複数の相手に伝える場面がよくあります。
たとえば「Dさんが転倒しそうになった」という出来事。スタッフへの申し送りでは「転倒リスク上昇、要観察」と簡潔に伝える。施設長への報告では経緯と対応をきちんと整理する。ご家族への説明では専門用語を使わず、心配をかけすぎないよう言葉を選ぶ。
同じ内容を、相手に合わせて書き分けるのは、実は手間のかかる作業です。
今日覚えるのは、ChatGPTに「誰に向けて」「どんなトーンで」を指定する方法です。これができると、一つの情報から複数の文書を一気に作れるようになります。
「形式」と「トーン」は別物
第4回で「形式を指定する」を覚えました。今回の「トーンと読者の指定」は、それとは少し違います。
・形式:どんな見た目で出すか(箇条書き、表、文章など)
・トーン・読者:誰に向けて、どんな言葉づかいで書くか
形式が「器」なら、トーンは「温度感」です。両方を指定できるようになると、AIの出力がそのまま使える場面がさらに広がります。
実際の手順
ステップ1|伝えたい内容をまとめる
事実をざっくりメモしておくだけで大丈夫です。文章になっていなくてかまいません。
ステップ2|「誰向けに」「どんなトーンで」を指定して送る
指示文に「ご家族向けに、やさしい言葉で」「施設長への報告として、簡潔に」などを加えます。
ステップ3|出力を確認して、必要なら調整する
トーンが合わなければ「もう少し柔らかく」「もっと簡潔に」と追加指示するだけで調整できます。

プロンプトは「育てる」もの。3段階で試してみよう
今回使うサンプルはこちらです:
Dさん、夕食後に廊下を歩行中にふらつきがあった。転倒はしなかったが、スタッフが気づいて支えた。血圧測定したところ上が90と低め。本人は「大丈夫」と言っているが、様子を見る必要あり。
※返答例はイメージです。実際の出力は毎回異なります。
Lv.1|読者もトーンも指定しない
【指示文(プロンプト)】
「以下の内容を文章にしてください」
ChatGPTの返答例:
Dさんは夕食後、廊下を歩行中にふらつきがみられました。転倒には至りませんでしたが、スタッフが気づき支えました。その後、血圧を測定したところ収縮期血圧が90mmHgと低値でした。本人は「大丈夫」と話していますが、引き続き様子観察が必要な状態です。 |
文章になりました。でもこれは「誰向け」かが曖昧です。スタッフ向けとしては少し固く、家族向けとしては専門用語が残っています。
Lv.2|読者を指定する
【指示文(プロンプト)】
「以下の内容を、ご家族への電話説明用の文章にしてください。専門用語は使わず、心配をかけすぎない言葉づかいで」
ChatGPTの返答例:
本日、夕食後にDさんが廊下を歩かれている際に、少しふらつく様子が見られました。転んではいませんが、近くにいたスタッフがすぐに気づいて支えておりますので、ご安心ください。 その後、体調を確認したところ、少し血圧が低めではありましたが、ご本人は「大丈夫」とおっしゃっており、現在は落ち着いて過ごされています。 念のため、しばらくは様子をよく見ながら対応してまいりますので、どうぞご安心ください。 |
専門用語がなくなり、家族が受け取りやすい文章になりました。同じ内容なのに、印象がまったく変わります。
Lv.3|読者とトーンを両方指定する
【指示文(プロンプト)】
「以下の内容を2種類の文章にしてください。」
・1つ目:次のシフトのスタッフ向け申し送り。簡潔に、事実を箇条書きで
・2つ目:施設長への報告書。発生経緯・対応・今後の方針の順で、です・ます調で
ChatGPTの返答例(スクリーンショット):
![]() |
一つの指示から、現場用と管理職向けの2種類の文書が同時に完成しました。
よく使うトーン・読者の指定フレーズ
・「ご家族向けに、やさしい言葉で」
・「施設長への報告として、簡潔に」
・「スタッフへの申し送りとして、事実中心に」
・「専門用語は使わず」
・「心配をかけすぎない言葉づかいで」
・「です・ます調で」
・「安心感を添えて」
第4回で覚えた形式の指定と組み合わせると、さらに細かくコントロールできます。
この技術、こんな場面で使えます
1. ご家族への状況説明文
電話やお手紙での説明文を、「やさしい言葉で、心配をかけすぎないように」と指定して作成できます。
2. 施設長・管理者への報告書
「簡潔に、事実と対応を整理して」と指定することで、報告の場に合ったトーンになります。
3. 外部機関への連絡文書
病院や行政への連絡文は「丁寧なビジネス文書として」と指定するだけで、文体が整います。
4. 新人スタッフへの説明資料
「介護の経験が少ないスタッフにもわかるよう、やさしく説明して」と指定すれば、研修資料の下書きとして使えます。
【きょうの10分】
今日あった出来事や申し送り内容を一つ選んで、まず「スタッフ向け申し送りとして箇条書きで」と送ってみてください。次に「同じ内容をご家族向けの説明文として」と追加で送ってみましょう。
同じ情報が相手によってどう変わるか、その変化を体感するだけで、今日学んだことは身につきます。
この連載のほかの記事は、こちらからまとめてご覧いただけます。 介護現場のAI仕事術 — 記事一覧

