#33 AIエージェントとは何か | 介護現場のAI仕事術

・難易度:★★
・所要時間:約15分
・使うツール:なし(読み物)


この連載で、ここまでいろいろなことをやってきました。

ChatGPTに記録の下書きを作ってもらい、GPTsで施設専用AIを作り、Makeでフォームの入力を自動的に整形してメールで届けた。

これらは全部、ある意味で「AIに仕事をさせる」行為です。でも、もう一段階上の世界があります。

それがAIエージェントです。


Lv.1 自動化・AIアシスト・AIエージェントの違い

似ているようで、実は全然違う3つの概念です。

  • 自動化(Automation) 「決まったことを自動でやる」。条件と処理があらかじめ決まっていて、その通りに動きます。Makeで作った「フォームが入力されたらGmailで通知する」がこれです。想定外のことが起きると止まります。

  • AIアシスト(AI Assist) 「人間が判断して、AIが手伝う」。ChatGPTに「この文章を整えて」と頼む使い方がこれです。AIは道具で、使うかどうか・使い方を決めるのは人間です。

  • AIエージェント(AI Agent) 「AIが状況を先読みして、人間が見落としがちな変化に気づき、必要な情報と提案を届ける」。ここが決定的に違います。「来週のシフトを最適化して」という目標を与えると、AIが自分でデータを見て、条件を確認して、問題のある箇所を見つけて提案する。最終的な判断はあくまで人間がします。

人間が一つひとつデータを確認しなくていい。AIが先に気づいて整理して届けてくれる。これがエージェントの本質です。


Lv.2 介護現場での3段階のイメージ

抽象的な話だけでは分かりにくいので、ヒヤリハット報告を例に3段階を比較します。

  • 段階①:自動化 「フォームが入力されたらGmailで通知が届く」。第28回で作った仕組みです。入力されれば通知される。ただそれだけです。

  • 段階②:AIアシスト 「フォームが入力されたら、ChatGPTが内容を整形して再発防止提案を添えてGmailで通知する」。第29回で作った仕組みです。AIが間に入って仕事をしていますが、「フォームを送信する」のは人間です。

  • 段階③:AIエージェント 「Googleフォームに蓄積されたヒヤリハット報告を毎週自動で分析し、件数の増加傾向・発生場所のパターン・時間帯の偏りなどを読み取って、スタッフが気づきにくい変化をいち早く整理し、その根拠とともに担当者にレポートをメールで送る」。

  • 段階②との決定的な違いは「先回り」です。段階②はフォームが届いたから動くのに対し、段階③は誰も頼んでいないのにAIが蓄積されたデータを読み続け、気になる変化があれば自ら届けます。「利用者のことを判断するのはスタッフ」という前提は変わりません。AIはその判断に必要な気づきを、先に整理して届ける役割を担います。

段階③はまだ介護現場で手軽に使えるレベルには達していません。でも段階①と②は今すでに実現できているし、段階③は確実に近づいています。


Lv.3 今存在する主なAIエージェント

すでにいくつかのAIエージェント的なツールが使える状態になっています。

  • ChatGPT エージェントモード 2025年7月にリリースされた機能で、ウェブ検索や情報収集、資料作成などを自律的に進めます。「競合施設の最新情報を調べてレポートにまとめて」という指示を出すと、自分でウェブを巡回して情報を集め、資料を作成して返してくれます。従来のChatGPTが「答える」だけだったのに対し、「手を動かして結果を出す」点が決定的に違います。Plus以上の有料プランが必要です。

  • なお、以前あったTasksという定期実行機能(「毎朝8時に天気をまとめて送って」など)はMakeのスケジュール実行に近いもので、エージェントというより自動化ツールとして理解した方が正確です。

  • Make AIエージェント 第28・29回で使ったMakeに、2026年からAIエージェント機能が追加されました。従来のシナリオは「AならB」という決まった処理をするだけでしたが、AIエージェント機能では「このメールがFAQで答えられるなら返信、答えられなければSlackに転送」といった状況の見極めをAIが担います。Makeの基本操作に慣れていれば比較的導入しやすい選択肢です。ただしエージェント設計は通常のシナリオとは別の考え方が必要で、ある程度の試行錯誤は見込んでおく必要があります。無料プランから利用可能です。

  • Google Gemini + Google Workspace GmailやGoogleドライブに深く組み込まれたAIエージェントです。「先週届いたご家族からのメールを要約して返信案を作って」「このフォルダ内のドキュメントを整理して」という指示を出すと、Googleの各サービスをまたいで自律的に処理します。Google Workspaceを利用している組織では導入しやすい選択肢です。ただし組織データとの連携や高度な機能には有料プランや契約形態が影響するため、事前に確認が必要です。

  • Claude Code Anthropicが開発したコーディングエージェントです。「介護記録のCSVファイルを読んで、転倒リスクが高い利用者を抽出して報告書を作って」という指示を出すと、自分でプログラムを書き、実行し、結果を返します。人間がコードを書く必要はありません。単なるコード生成ではなく、ファイルを読み込んで実行して結果を確認するというサイクルを自律的に回す点がエージェントらしさです。

  • Microsoft Copilot WordやExcel・Outlookに組み込まれたAIエージェントです。「先週のメールから対応が必要なものをリストアップして」「このExcelの数字からグラフと分析コメントを作って」という指示に、Office内のデータを参照しながら自律的に対応します。Microsoft 365と連携して利用できます。すでに職場でOfficeを使っている場合は、使い慣れたツールの延長として試しやすいのが特徴です。


この連載でここまで来た

少し立ち止まって振り返ります。

第1回でChatGPTに初めて話しかけたところから始まりました。記録の下書き、研修資料、行事の企画、シフトの下書き、そして自動化。気づけばAIを「使う道具」から「動かす仕組み」へと扱い方が変わってきています。

エージェントはその延長線上にあります。

「AIに話しかける」→「AIを使いこなす」→「AIを動かす仕組みを作る」→「AIが自律的に動く」。

介護現場がこの段階のどこにいるかは、施設によって違います。まだ第1回の段階の方も、Make×ChatGPTまで来た方も、それぞれの次のステップがあります。

この先の連載では、GPTsの深掘りとClaude Codeを通じて、「AIが自律的に動く」世界に少しずつ踏み込んでいきます。


まとめ

  • ・自動化・AIアシスト・AIエージェントは「AIの自律性の度合い」で区別できる
    ・エージェントは先回りして気づきを整理し、人間の判断に必要な情報を届ける
    ・すでに使えるエージェント的なAIはいくつかある(ChatGPT Tasks・Gemini・Claude Code・Copilotなど)
    ・介護現場での本格的なエージェント活用はこれから。でも準備は今できる


【きょうの15分】

自分の施設のAI活用が今どの段階にあるか、考えてみてください。「まだ話しかけるだけ」でも「Makeまで使っている」でも、どちらも正解です。次の段階が何かを意識するだけで、見え方が変わります。


この連載のほかの記事は、こちらからまとめてご覧いただけます。

介護現場のAI仕事術 — 記事一覧